大事なのは、刑が確定していない地点での、逮捕が理由の解雇を法で規制することでは

 弁護士ドットコムに、逮捕拘留地点での解雇は有効かどうかの記事が出ていました。

逮捕されただけでまだ有罪かどうかはわからないが、会社にとっては、大きなマイナスイメージが広まってしまうことになる。特に、公務員、有名企業の会社員、報道関係者などは、実名と所属組織名がともに報じられることも多い。

このような不祥事に関わる問題では、逮捕された容疑者が依願退職するケースが多いようだが、会社として、従業員が逮捕されたり有罪判決を受けたりした時点で、解雇することは可能なのだろうか。田代耕平弁護士に聞いた。
(中略)
「報道等で会社名が出るケースでは、会社の社会的な地位が高く公共性を有するような場合が多く、また、報道自体によって会社秩序が乱されるともいえるので、解雇が認められる場合も多いと思います。しかし、犯行の態様は様々ですのでやはりケースバイケースと言わざるを得ないでしょう。もっとも、報道されたという事実は解雇の有効性の判断において重要な事実と言えます」

逮捕された従業員が容疑を認めていた場合、どうだろうか。

「本人が被疑事実を認めている場合には、逮捕後と有罪判決後で違いは大きくありませんが、否認している場合には、逮捕の理由となった事実(被疑事実といいます)を前提として解雇することは慎重に行う必要があります。逮捕の時点では、裁判所にとっても被疑事実が真実であると確定しているわけでないからです(無罪の推定)。
このことは、逮捕の事実や会社名が報道されたとしても基本的に変わりません。すこし別の言い方をすると、社員が犯罪者として報道されたこと自体は解雇の直接の理由にはならないということです」
従業員が逮捕されて、会社名とともに報じられた! 会社が解雇に踏み切ることは可能? 2017/8/18 弁護士ドットコム

 事実、犯罪行為を起こして、逮捕されたからといって直ちに解雇するのは、裁判で無効になった例が山ほどありますし、そもそも、有罪となった場合でも、犯罪行為そのものが仕事に影響が出たり、会社の名誉を傷つけるものでなければ、罰を与えてはいけないという裁判例も存在します
 但し、これは直接的な法で守られるものではありません。労働各法には、「逮捕拘留されても、有罪が確定するまではその地位を保証しなければいけない」というものは存在していませんし、一番近い法律と云えば、日本国憲法31条と、国際人権規約B規約第14条2項の「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する。」という所でです。それ故、先程の記事にある「報道によって会社の名誉を傷つけられた為、逮捕された従業員の解雇は有効」という事が起こっています(無罪だったら、裁判でひっくり返される可能性は高いですが、必ずしもとはいえませんので)。

 また、引用記事にもあるように、逮捕拘留の地点で、ほぼ犯人として、所属会社まで報道されている現状も無視は出来ないでしょう。このような現状もあり、推定無罪の原則が働いておらず、逮捕拘留によって解雇されたり、地位待遇が下げられる事例が山ほど存在しています。裁判や労組での団交で無効にすることは大体可能ではありますが、大体ではなく、直接的な法規制によって、有罪が確定していない人へ不利益を与えるのは絶対的に無効にすべきでしょう。

参考:逮捕された社員を解雇できる? 労働問題.com 

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