直接的に価値を生まない時間であっても、拘束していれば賃金が発生する

 情報労連のツイートより、『「過労死等ゼロ」緊急対策の取りまとめについて』というのを、去年末に厚生労働省がとりまとめたみたいです。

 そもそも、賃金が発生し得る労働時間とは、労働によって価値が生じた時間ではなく、使用者の指揮命令の下に置かれていたか否かで決まります(参考:三菱重工業長崎造船所(一次訴訟・会社側上告)事件 の判例)。その為、研修や指揮命令による学習時間も、元来は賃金が発生し得る労働時間となり、このとりまとめは新たな指針ではなく、法的に当たり前の事を明記したにすぎません。但し、今回、「黙示の指示」も含まれており、つまり「会社が直接指示を出したわけではない」という主張が必ずしも通るわけではないことも明示されています。「黙示の指示」とは、例えば、資格取得が必要等、業務に必須の研修ではあるが、会社が直接的な指示を出していないような場合に、成り立つものです。なお、残業に関しての「黙示の指示」の事例として、 野崎徳州会病院事件(参考)があります。
 とはいったものの、現状では未だに無給で研修をさせている企業は少なくありません。弁護士ドットコムで「研修期間 無給」で検索したら22件もあり、恒常化とまでは云えないかもしれませんが、ごく珍しいものではないのは事実でしょう。また、「ガイアの夜明け」で紹介された、月270時間もの長時間勤務にも関わらず、研修中だからという事で1円も賃金を払わなかった酷い企業もあります(参考)。それ故、厚生労働省がこのようなとりまとめを出したことは、過重労働を防ぐ為にも意義のある事なのは事実だと思います。
 タイトルにも書いた通り、「直接的に価値を生まない時間であっても、拘束していれば賃金が発生する」事を我々はしっかり頭に入れておきましょう。

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