「残業上限規制を検討」は効果的なものになるか

 加藤勝信働き方改革担当相が、残業上限規制を検討するというニュースが入りました。

 加藤勝信働き方改革担当相は28日のNHK番組で、9月にも発足する「働き方改革実現会議」で残業時間上限規制の導入を検討する考えを示した。
 (中略)
 その上で、「時間外の労働規制の在り方について、しっかり検討していきたい。来年の3月までには方向性を出したい」と述べた。 
残業上限規制を検討=加藤働き方改革相 時事通信 2016/08/28-11:05)

 上限規制が適正に行われるのであれば、これは非常に歓迎すべきものになるでしょう。
 しかし、残業時間の上限は、以前にも書いた通り、労働基準法第36条第2項 ※1 の条文と、実際の厚生労働大臣の決定によって、定めが存在しています。そして、これの違反は、法的には「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金」となっております。但し、繁忙期には例外を認められるようなザル法であるためか、36協定においてすら平気で超過したものが認可されたり、そして例えそれに対して違反行為をしても罰を受けた例は皆無に等しく(調べても、「月100時間を超える違法な時間外労働で書類送検」という記事にある程度。そして、これより長時間労働をさせた場合でも、書類送検すらされないケースのほうが多い)、問題が起きても労働争議か民事訴訟の扱いになるケースがほとんどです。つまり、現行は法律はあってないようなものです。ただ、一定の基準 ※2 を越した残業が原因で退職した場合は、会社都合退職の扱いになるという特例はありま。
 今回の規制が、このような法の抜け穴を埋めるようなものであるには、特別な場合に適用されるような例外を認めず、また、運用するための仕組みにも工夫が必要になるでしょう。来年の3月までには方向性を出すとあるので、その時にどのようになっているか注目していきましょう。
 なお、過労死事件は、過労死の認定条件を考えれば当然かもしれませんが(認定時、厚生労働省が定める、過労死ラインを超えているかが大きな基準になる場合がほとんど)、ほぼ全て長時間残業によって起きているので、この規制がうまくいけば、過労死による死亡もほぼゼロにすることが可能となります。


※1 「厚生労働大臣は、労働時間の延長を適正なものとするため、前項の協定で定める労働時間の延長の限度その他の必要な事項について、労働者の福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して基準を定めることができる。」
※2 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。

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