高度プロフェッショナル制度により残業代ゼロの可能性がどう生じるか

 労働関係の法律に佐々木亮弁護士のフェイスブックで、今秋、政府が一部の業務に対して残業代ゼロにするカタチで労働基準法を改正すると書かれていました。今回はそれについて。

 厚生労働省のホームページより、概要はこうなっています。

(3) 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
• 職務の範囲が明確で一定の年収(少なくとも1,000万円以上)を有する労働者が、高度の専門的知識を必要とする等の業務に従事
する場合に、健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、労働時間、休日、深夜の割増賃金等の
規定を適用除外とする。
• また、制度の対象者について、在社時間等が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさ
せなければならないこととする。(※労働安全衛生法の改正)

労働基準法等の一部を改正する法律案(pdf) 厚生労働省内ページ

 また、具体的な法案はこうなっていました。

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 つまり、簡単に書くと、労働組合(それに類似した団体)の4/5の決議、厚労省の定める年間基準平均給与額の3倍以上、高度の専門知識を必要とし、かつそれが時間と成果との相関性が低い場合にのみ、使用者が届け出ることで残業代の支払いがいらなくなるという事です。また、だからといって無限に労働させて良いわけではなく、一定時間の休息は与えないといけないとあります。
 まあ、これだけを見た限りでは、ごく一部の業務以外には関係なく、かつ、上限が定められているので、「残業代ゼロ」は大げさに思えるでしょう。
 然し、本当にそう言い切ってよいのかは、下記の点を考えると難しいと思います。

①一度定められた法律は、改訂によって適用範囲が広がる事が少なくない

 例えば、派遣労働者は、労働者派遣法が制定された直後、元来は一部の専門的な業務でのみ認められていました(ポジティブリスト方式)。しかし、それは一部の業務を除いて認められるものとなりました(ネガティブリスト方式)。つまり、対象範囲が自然に広げられていったのです。

②違法過重労働によるペナルティが軽減し、企業の違法行為へのハードルが下がる

 元来払うべき金額が減少した事により、違法な過重労働に対してのペナルティ額も減少すると考えることが出来ます。その為、実質上企業の違法行為へのハードルが下がり、結果違法行為が増える可能性もあるかもしれません。

 まあ、今後どうなるかについては断言はできませんし、法案もこの状態そのまんまで提出されるとは限らないので、法案の審議がどうなるか、しっかり監視していきましょう。

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