注文ミス等の軽微なミス程度で賠償金を払う必要はない

 名古屋を中心に展開している有名チェーン店「珈琲所コメダ珈琲店」で、罰金制度があると一部で話題になっている件について。
 BUJINESS JOURNALにその事についての法的な観点の記事があり、大筋はその通りなのですが、一点だけ微妙な箇所があったので。

労働者のミスへの違約金は違法

 まず、アルバイトも含めた労働者の権利義務関係について定める労働基準法は、「給料(アルバイト代)は、労働者に対し、直接、全額を支払わなければならない」と規定していますので、「注文ミス分の商品代金を給料から天引きする」「無断欠勤などの際の“罰金”を天引きする」ということであれば、それだけで労働基準法違反となり、違法です。
(中略)
 もっとも、注文ミスによって雇用者である店側に商品代金分の損害が発生していることは確かですから、アルバイトに対し、商品代金分の賠償を求めること自体は違法でもなんでもありません。

コメダ、バイトのミスや欠勤への「罰金」制が波紋…労働基準法違反の可能性も BUJINESS JOURNAL 2016/8/24

 この記事を読んだ限りでは、「注文ミスした分は、店側が全額賠償可能」と考えてしまう人が多いでしょう。しかし、最高裁で昭和51年7月8日に判決が出た茨城石炭商事事件では、

 労働者に通常不可避的にともなう軽過失による損害については、使用者があらかじめ想定し、保険制度や価格機構を通じて比較的容易にリスク分散しうるものであるから、信義則上(民法第1条第2項、労働契約法第3条第4項)、使用者が基本的に責任を負担すべきである。

 とあり、軽い過失で、かつ通常不可避的に起こり得るものであれば、使用者が基本的に責任を負うべきとあります。では、注文ミスはこれに当てはまるのでしょうか。
 まず、注文ミスの損害は、せいぜい千円前後だと考えれば、重大ではなく、軽過失という扱いになるでしょう。

 これにピタリ当てはまる具体的な判例資料はありませんが、コメダでの注文は口頭のみで行うのが基本なので(何度か入ったことがありますが、すべての店舗がそうでした)、従業員に過失がなくても、注文者が注文を覚えていなければその地点で注文ミスとなります。また、注文者が注文時に何度もキャンセルをしたり、実際とは違う商品名を言った場合、特に就業開始したばかりの店員にとっては、正確に把握するのは難しいでしょう(注文繰り返しは行えど、その際に注文者がしっかり聞いているとは限らない)。そのため、注文ミスについては、通常不可避的に起こり得るものと判断される可能性は高いです。先述した通り、その場合は従業員対して賠償を求めても、支払う義務は生じません。但し、注文ミスが通常では考えられない程度に頻繁に行われる場合は、賠償が合法になる可能性もあります。

 ともあれ、通常の注文ミス程度で賠償金を払わなければいけない可能性は極めて低い為、請求された場合でも支払わないようにしましょう。

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