求人詐欺に新たな罰則が設けられるかもしれない

 以前、求人詐欺の対処についての記事を書きましたが、厚生労働省が懲役を含む罰則を検討し始めたとのことです。

公共職業安定所(ハローワーク)や大学を含む民間の職業紹介事業者に賃金などの労働条件を偽った求人を出した企業を対象に、厚生労働省が職業安定法に懲役刑を含む罰則を加える改正の検討に入ることが2日分かった。

職安にうその求人内容、懲役も  共同通信 2016/6/3

 現状では、前の求人詐欺対処の記事にも書いたとおり、正式な契約を確認し、それが実際の条件と違う場合には、民法第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。 という文言の通り、一方的に破棄は可能ではあります。しかし、それに対する罰則は存在しませんでした。民法に規定はあれど、財産を直接侵害しているわけではないため、刑法上の詐欺罪に当たる可能性も低いです(判例を全て見たわけじゃないので、断言はできませんが…)。
 しかし、今回の検討によって、懲役刑が追加されるとあります。努力義務ではなく、具体的な罰則にまで踏み込んだ点については、素直に評価してもよいでしょう。

 但し、懲役刑を設定しても、それがどれくらい運用されるかについては疑問が残ります。事実、労働基準法では、協定なしでの週40時間を超えた労働をさせること(労働基準法第32条)、一日8時間を超える残業分の割増賃金支払いをしないこと(第37条)、産休を与えなかった場合(第65条)等についても、違反の場合は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると、第119条にあります。しかし、悪質なケースでさえ、懲役刑として適用された例はほぼありません。
 こちらが調べた限りでは、京滋バイパスでのタンクローリー事故が、管理監督者が懲役付で処罰された唯一の例です(過重労働が原因として、社長に懲役1年(地裁では1年2ヶ月)、直接の上司に懲役1年執行猶予3年。労働基準法違反と道交法違反(過労運転容認)が適用された。参考・類似の判例14(過労運転事故)<シンク出版株式会社>)。しかし、これも労働基準法単独で適用されたものではありません。悲観的な見方ですが、今回の改正で懲役刑が出来ても、現状がこの調子では、適用はされないでしょう。
 しかし、交渉時の揺さぶりとして使う事は可能ですし、今後の労働者側の運動次第では適用の可能性もあるので、この動き自体は素直に歓迎したいところです。願わくば、この改正を持って、求人詐欺をやる企業が激減して欲しいものです。

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