蜷川幸雄氏の指導方法はパワハラである

 初めにお断りしておきますが、蜷川幸雄氏が非常に優れた演出家であることを否定する気はありませんし、今回のエントリーもその目的はありません。この件に限りませんが、明らかな暴力(暴言を含む)行為に対し、肯定的な意味で「厳しい」と容認するような風潮に対する苦言が主目的です。

 先日亡くなられた蜷川幸雄氏の追悼記事について。

そこで容赦のない灰皿と靴と罵声が飛んできたこと。私も生意気だったから、突っかかっていったこと。『おまえはブスだから、誰もが黙る演技を身に付けろ』と言われたこと。要求の芝居に答えられず『おまえなんか死んじゃえ』と言いながら目の前で胃薬飲まれたこと」と思い出を振り返った。

寺島しのぶ 蜷川幸雄さんから「おまえはブス」灰皿と靴と罵声も

 言うまでもありませんが、どんな意図があろうとも、これは立派なパワハラです。厚生労働省の定めるパワハラ6類型の、②精神的な攻撃や、投げたものが当たった場合は①身体的な攻撃にあたります。また、刑法としても、侮辱罪、暴行罪も十分成立します。なお、パワハラ認定には、雇用形態は関係なく、業務請負等でも成り立ちます(参考:弁護士ドットコム パワハラ・業務妨害等の業務請負上でのトラブルです。 )。
 蜷川氏は後でフォローする場合も多く、結果としては慕われていたみたいですが、だからといってパワハラ行為は免罪されません。そもそも、暴言や暴力を用いて、認知的不協和を起こさせ、自我を失わせ、暴言や暴力が正しいと思い込むというのは、カルト宗教やブラック企業と同じ手法です
 蜷川氏を素晴らしい演出家として追悼を行うのを止める気はありませんが(自分も演出は素晴らしいと思います、そんなに舞台を見たわけじゃないですが)、こういう反社会的なパワハラ行為まで肯定的に扱うというのは、悪事に加担協力しているのと同じだというのは言い過ぎでしょうか。

 まあ、黒澤明氏をはじめ、日本の映画監督や演出家は暴力、暴言を用いる人が多いのは否定できませんが(黒澤映画好きだけど…)、伊丹十三氏は怒鳴ったりせず、かつ妥協しない演技指導をしていたという話もあります。また、海外の映画監督のドキュメンタリーを数度見たことありますが、何度もやりなおす等厳しい演技指導はあれど、暴力や暴言を用いたものは見たことがありません。
 いい加減、こういう暴言、暴力を「厳しい指導」として持ち上げるのは辞めたほうが良いのではないでしょうか。昨今の有害無益なブラック企業の研修や、部活動の体罰問題も、こういう風潮によって増幅されている一面はあるでしょうから。

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