『若者は責任が嫌で派遣社員になるんだ』お爺さん~について雑感

 ツイッターの下記まとめより。

ぺたぞう @pettanesa
今、レストランの隣の席でお爺さん達が話してるんだけど、最近会社の若いのが派遣社員ばっかりになってる、って話題で「俺達は家族や老後のことを考えて正社員になったけど、奴らは責任が嫌で今日のことしか考えないから派遣になるんだ」とか力説してる。そんな認識じゃあ話が噛み合わない訳だ…。

ルガンスロット @ruganslot
@pettanesa @sasakitoshinao 正社員になりたくてもなれなくて派遣で仕事を続けてる人は一杯いるのにね、、、

正社員に登用してないのはあんたらだろうが!!と言いたい

『若者は責任が嫌で派遣社員になるんだ』お爺さんと若者の認識のズレが大きすぎる「正社員になりたくてもなれないんだよ」 togetter

まず、前提知識として、
●労働者派遣法は1986年に制定された為、大学新卒時に派遣となる可能性があるのは基本的に1960年代前半以降生まれが該当。
(但し、それ以前から業務請負という形で似たものはあった)
●ただし、施行時はソフトウェア開発、事務機器操作、通訳、翻訳、速記などの専門性が必要な一部業務のみ(ポジティブリスト方式)。
●1996年に業務が追加され、放送番組などの大小道具、建築物清掃等一部に専門性が必要でなくなった業務が追加される。
●1999年にほとんどの業務で認めるネガティブリスト方式となる。
●派遣社員需要はそれに従って増加していった。

という歴史と、
●2015年の調査で、非正規の職員・従業員についた主な理由で最も多いものは、男性が「正規の職員・従業員の仕事がないから」、女性が「自分の都合のよい時間に働きたいから」となっている。
詳細:厚生労働省 労働力調査(統計)

 という調査を知っておく必要があるでしょう。

 結論から書いてしまうと、多くの人がまとめに書いているとおりの「正社員になりたくてもなれない人が山ほどいるのに、それが分かっていない」という意見に全面賛同です。正社員がないから派遣や非正規で働いている人の割合が、統計結果から見ても明らかに少なくはありません。派遣労働の範囲が広がり、企業側の需要が上がった結果、置き換えが進んでいる事実もそれを後押ししています。
 そして、もう一つ思ったこととしては、『俺達は家族や老後のことを考えて正社員になった』という事について。
 バブル経済は弾けるくらいまでは平均賃金は右肩上がりでした。しかし、それ以降はやや微減しています(参考:年次統計 サラリーマン年収)。また、大学の学費についても、国立大学が法人化し、年々高騰しています(参考:年次統計 国立大学授業料)。一方で、年金受給額は1999年から減り続けています(老齢基礎年金支給額の推移 )。まあ、非正規や派遣のほうが解雇されやすいという意味で「家族のこと」というのはあながち間違いではないのかもしれませんが、正社員として働くことで、家族や老後の心配をせずにいられたのは統計的にも既に昔のこととなっており、例え正社員であっても高給でなければ子育てや老後は決して安泰ではありません(低賃金の派遣、非正規ほど深刻ではないのかもしれませんが)。報われない、安泰ではないものにしがみついてまで責任をとりたくはないという考えも、人間として当然ではないでしょうか。
 もっとも、今は低賃金の非正規労働者に責任を押し付ける企業も山ほどあり(それがブラックバイトの原因の一つ)、責任感のある人間ほどバカを見るような状況にすらなっているのも事実です。そういう意味でも、派遣や非正規は責任感がないというのは、言いがかりでしかないでしょう。

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