「非正規賃金、正規の8割目指す」と政府が数値目標を出した

 最近盛り上がりつつある「同一労働同一賃金」制度ですが、政府側から具体的な数値が出てきました。

 自民党の同一労働同一賃金に関するプロジェクトチーム(PT)が、非正規労働者の正規労働者に対する賃金水準について、日本より2割ほど高い8割程度の「欧州諸国に遜色ない水準の実現」を目指す方針であることが分かった。5月にもまとめる党の「ニッポン1億総活躍プラン」に盛り込み、非正規労働者の賃金底上げをするのが狙いだ。
 厚生労働省によると、日本のフルタイムの正規労働者に対するパートタイム労働者の賃金水準は57%だが、フランスは89%、ドイツは79%と欧州ではかなり高い水準になっている。日本の非正規労働者の昇給がないことが、賃金水準が低い原因の一つとされる。
 現在検討されている党PTの論点整理案によると、企業に対して「勤続に伴う職業能力の向上を昇給にどう反映しているかなど、賃金体系への説明責任を果たすことを求める」などと記述し、昇給を検討するよう求める方針だ。また通勤手当や福利厚生にも格差があるため、「合理的理由のない格差是正を求める」とも記した。すぐに対応することが難しい中小企業などには国による支援などを検討し、逆に正規労働者の賃下げにつながることがないようにすることも確認する。
自民PT 非正規賃金、欧州並みに 正規の8割目指す 2016年4月7日 毎日新聞 

 記事では何故か書かれていませんが、「パートタイム労働者の賃金水準は57%」というのは、厚労省の資料(pdf注意)を見た限りでは、一時間あたりの賃金の比較で間違いないでしょう。
 なお、現在雇用形態における賃金格差を禁止する法律としては、「パートタイム労働者と正社員の差別的待遇を禁じた改正パートタイム労働法」「同一労働同一賃金推進法」が制定されています。また、少し前になりますが、「業務内容、勤務時間及び日数等が正社員と同様と認められる臨時社員の賃金が、勤務年数の同じ正社員の8割以下であるときは、使用者に許された裁量を逸脱したものとして公序良俗違反となる。」という判例も出ています(丸子警報器事件判決 平成8年3月15日)。しかし、法律は現状ではあくまで努力義務にすぎず、罰則もない為、有効に利用されていません。また、厚労省のリーフレット5P(pdf注意)によると、同一の職務、責任であっても、転勤の範囲や職務変更や配置の差があれば、同一にする義務は除外されます。言ってしまえば、「正社員は北海道の転勤もありえるが、非正規は青森までしかなし」位の差があれば、賃金格差を是正する義務はないということです(判例でひっくり返される可能性も十分ありますが…)。
 それ故、現状は法律はあってもほとんど活用されていないと言っても良いでしょう。

 しかし、具体的に数値目標を決めるとなると、目に見える結果を求められるため、絵に描いた餅状態の努力義務を制定するだけでは不十分となります。その為に具体的にどう動き、どれくらいの期間で結果を出していくのか。そして、きっちり結果が出てくるのかをしっかり監視していく必要があるでしょう

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