経団連会長が「残業代ゼロ法案」の対象範囲を広げたいと発言

 日本経済連合会会長の榊原定征氏が、毎日新聞のインタビューで下記のように発言していました。

 --政府と経済界は労働時間でなく成果に基づき賃金を払ういわゆる「残業代ゼロ法案」成立も目指していますが、長時間労働是正に逆行しませんか。

 ◆女性や高齢者の労働参画のためにも、時間でなく成果で評価する制度は必要だ。在宅勤務の導入促進にもつながる。この法案は年収1075万円以上など対象者が極めて限定されており、範囲を広げるべきだ。もっとも、同一労働同一賃金や長時間労働是正を加味した新しい(労働規制の)体系作りが必要かもしれない。
「展望・日本経済2017 規制改革、加速を 経団連・榊原定征会長」2017/1/5 毎日新聞

 もっとも、インタビュアーの言う、「労働時間でなく成果に基づき賃金を払ういわゆる「残業代ゼロ法案」」という認識も間違いで、一定の年収がある人に対しては、その企業の労働組合(それに類する団体)の決議と厚生労働省の決議により、使用者が休日や時間外労働等の割増賃金を払わなくするためだけの制度であり詳細は過去記事にも書きました)、成果に基づき賃金を払わすものではありません。なお、最低限の賃金は定められていても、賞与や各種手当によって、成果に基づいた賃金を支払う事は現行法でも可能です。
 閑話休題。榊原会長は、記事の中にあるように、「残業代ゼロ」法案の対象範囲が狭いので、広げたいと公言しました。この法案の対象範囲を考えれば、もっと低い年収の人に対象を広げるということであり、つまり「もっと低賃金でより長時間働かせたい」とトンデモない事を言っているわけです。「長時間労働是正に逆行している」というインタビュアーに対しても、正面から回答をしていません。なお、在宅勤務の場合であっても、「みなし労働時間」ということで労働時間管理は可能であり(悪用しているケースも多いですが)、このような制度、法案がないから在宅勤務が進まないという認識は、かなり無理があると思います。
 経団連は政治にも大きく影響する、強大な団体です。その代表が、長時間低賃金労働を推進している現状を、我々はしっかりと把握する必要があるでしょう。労組やNPO等、各労働者側の団体が政治に働きかけた結果、長時間労働の問題は少しずつ前進しつつある印象はありますが、このような法案が通ってしまったら、無意味になってしまいますので。

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