芸能界は法治がおざなりになり、かつ組合が機能していない場合のサンプルかのかもしれない

 所謂「芸能人」に対し、不公正な契約が結ばれているということで、公正取引委員会が調査を始めたとのことですが…。

芸能人と所属事務所の関係をめぐっては、事務所側が認めなければ独立や移籍ができなかったり、事務所を辞めた後の芸能活動を制限したりする契約を結んでいるケースがあり、専門家はこうした契約が芸能人の独立や移籍をめぐるトラブルの背景にあると指摘しています。
このため、公正取引委員会が芸能人と所属事務所の間で独占禁止法に抵触するような不公正な契約が結ばれていないかどうか、調査を始めたことが関係者への取材でわかりました。

(中略)

労働問題が専門で芸能人の契約をめぐるトラブルの裁判も担当したことがある菅俊治弁護士は「タレントと事務所の力関係をすごく反映していて対等なものとは言えない契約が多いと思う。タレントが『この事務所に所属していてもメリットが少ない。自分のために一生懸命やってくれない』と思っても、なかなか自分からは契約を解除できない形になっており、生殺与奪の権利を事務所が握っているという問題がある」と指摘しています。

そのうえで、「事務所側には『多額の経費をかけているので、回収するまでは辞めさせることができない』という理屈があるのだと思うが、才能のあるタレントが事務所との関係で活躍できなくなっている問題があり、日本の芸能文化の振興にとって本当にいいのかと思う。タレントと事務所が共存共栄していくための公正な契約の在り方が今後、求められると思う」と話しています。

大手芸能事務所など不公正な契約ないか調査 公取委 NHK news 2017/7/7

 経費をかけて教育するのは、芸能界以外の企業でもやっていることですし、経費が回収できないから辞めさせないというのは違法行為なのですが…。

 閑話休題。
 昔から日本の芸能界では、本人に裁量があまりない場合でも業務委託契約にされていたりする(例。吉本興業)ように、普通の雇用契約が結ばれていない事が多いです。その為、明らかに最低賃金を下回る賃金しか貰っていない例は山ほどあり(ドロンズが1年以上ヒッチハイクして10万円しかもらっていなかったという例もあり)、生活できるだけの賃金を得られず、廃業率も高くなっているようです(ちゃんとした統計が見つからず、色々な資料を見た上の推測ですが)。これらの問題が表出し、調査を行うことは歓迎すべき事でしょう。
 しかし、これらの調査だけでは力関係が簡単に改善できるとは思えません。そもそも、アメリカの映画俳優組合(SAG)のようなものは日本には存在せず、労働組合法に守られたような対等な関係を築くことが出来ていません。俳優の小栗旬さんが俳優の組合を作りたいと話していたのも、現状の力関係が対等とは程遠いものの証左でしょう(参考)。
 芸能界の問題は根深いですが、これは、組合が存在せず、法律違反が当たり前になっていると、どの業界でも起こり得るのではないでしょうか。これを一部の特殊な事例と考えずに、どこででも起こり得る事であるという自覚が必要なのかもしれません。

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