電通の個人事業主転換は、無効になる可能性もあるし、問題が多い

日本経済新聞の記事より。

電通は一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を始める。まずは2021年1月から全体の3%に相当する約230人を切り替える。電通では副業を禁止しているが、新制度の適用を受けると兼業や起業が可能になる。他社での仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に生かしてもらう考えだ。

新制度の適用者は、営業や制作、間接部門など全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集した。適用者は早期退職したうえで、電通が11月に設立する新会社と業務委託契約を結ぶ。契約期間は10年間。電通時代の給与を基にした固定報酬のほか、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティブも支払われる。

適用者は電通社内の複数部署の仕事をするほか、他社と業務委託契約を結ぶこともできる。ただ競合他社との業務は禁止する。電通は「新しい働き方を求める社員の声に応じて制度導入を決めた」と述べ、人件費縮小などリストラ策ではないとしている。
電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう(日本経済新聞 2020年11月11日)

拘束時間や指揮命令の方法等、詳細までは書いてありませんが、「個人事業主」となれば、一般の雇用契約にあるような指揮命令権はありません。つまり、出勤時間を管理したり、業務に必要な命令をすることは不可能です。裁判所や労働委員会の判断が必要になりますが、実態が雇用形態であれば、契約がどのようなものであれ雇用契約とみなされます。
それとは別に、「競合他社との業務を禁止する」という項目も、雇用契約の場合でも制限されるものなので、無効になる可能性がありますし、これも踏まえて雇用契約と判断される可能性もあります。

そもそも、個人事業主という扱いになれば、雇用契約の場合と違い労働時間の管理も保険加入義務もなくなります。その為、実態に合わせる形にしないと、労災や過労死が多発します。
少し前に偽装請負が話題になりましたが、今回の件も同じようにならないようにすべきでしょう。


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