LGBTIの労働問題を知る為の一冊

書評文。
「LGBTIの雇用と労働―当事者の困難とその解決方法を考える(三成美保編集)」晃洋書房。タイトル通り、LGBTIの方の労働諸問題について、複数の専門性のある著者が事実に基づいて、問題点や取組み等を記しているものです。


1章では、名古屋功氏が、労働各法からLGBTIの方が現行法では守られていない事実や、判例や最近の法的な取り組みを記しています。二元論的な性別から外れている人は、服装の社内規定やハラスメント等の会社の無理解だけではなく、社会保険の配偶者という法的な部分からも現状では外れてしまう事は、知らなかった人も少なからずいるのではないでしょうか。

2章では、村木真紀氏、後藤純一氏が、企業の具体的な取り組みと、LGBTI当事者からの調査で実際に欲しているものについて記しています。下手なもの、形骸化された取り組みはむしろハラスメントを生みかねないというのもあるので、こういう考察は必要でしょう。

3章では、国際労働機関の政策について、木村愛子氏が記しています。男女平等からさらに踏み込んだジェンダー平等への取り組みになっていった歴史や、今後まだまだ未解決な課題等を記しています。

4章では、法的なものを含めた今後の課題について、事例も用いて永野靖氏が記しています。具体例を出して、法的に足りない部分を考察しています。

5章では、LGBTI当事者の就職、就労について、現場の声から薬師実芳氏が記しています。ハラスメントのような問題から、性別が男女前提となっているエントリーシートの問題、1章にもあるような社会制度の不整備の問題など、決して少なくない問題があることが記されています。

LGBITの人は、就労に対し、「男女」と2分化された性を持つ人と比べても、様々な形で不利になっていることがこの本に記されています。経営者や人事権を持つ人だけでなく、全ての職業生活者にとって、この本に書かれた問題は理解しておく必要があるように思えます。

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