書評「#KuToo: 靴から考える本気のフェミニズム」(石川優実)は広くハラスメントを考える本だ

久々に書評文。
石川優実「#KuToo: 靴から考える本気のフェミニズム」現代書館。フェミニズム本ではありますが、実際は「女性へのハイヒール靴強要」のみではなく、広くハラスメントについて記述されています。

解説しておくと、#Kutoo運動は、職場で女性だけ正当な理由もなく危険性の高いヒールやパンプスを強制されるのはおかしいという社会運動で、最近は国会でも超党派で取り上げられました。

この本は何部か構成が分かれており、1章は著者の石川優実さんの体験したハラスメントの話や、声を上げた時の反応や現状の話等。2章は、SNSでの#kutooに対する曲解や罵倒、ハラスメント等の所謂「クソリプ」と、それに対する返答。3章は専門家(労働政策研究・研修機構の内藤忍さん。ジェンダーハラスメント研究、コンサルタントの小林敦子さん)との対談となっています。

1章の話は、石川さん個人の体験が中心となっていますが、ハラスメントに黙らず戦っていく事で、ハラスメントを受ける事は無くなったこと、そして、この国の男性優位の構造に気付いた事等が記述されています。
2章は実際に受けた、SNSでの言及(所謂「クソリプ」)についてですが、その中には職場で行えばハラスメントになり得るものも少なからずあります。それに対して、著者の石川さんは「間違ったものは間違ってる」と書いてます。ハラスメントを受けると、それが理不尽な内容でも「自分が悪かったかもしれない…」と思い込んでしまいがちですが、毅然と、理路整然と返す態度こそが、ハラスメントに負けない為に必要であると感じさせます。
3章は、専門家との対談となりますが、内藤さんは労働問題の専門家なだけあり、過去に航空会社の人が労働組合で機外のハイヒールの強制を辞めさせた事や、ヒゲを原因に不利な扱いをした会社が敗訴した事等、具体例を示して、労働組合の必要性と現状での限界、#kutoo運動の意義などを示していました。小林さんはハラスメントの専門家である為、必ずしも固定概念化、記号化されたもの(例えば、セクハラは男性から女性にだけ行われているものではない)のみではない事を示しています。
1,2章については、共感や勇気づけ的な内容ですが、3章は専門家を通じてハラスメントに対する知識として役立つ事が多く載っています。ヒール強要に限らず、広くハラスメントを考え、知る上で役に立つ本だと感じます。

P.S 「著作権侵害」という主張で差し止め請求裁判が行われていましたが、著作権侵害の事実は一切ないとの地裁判決が出たので、問題なく買えます。

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